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D3X vs. D700 抜けた写真編
 NikonD3X(iso100)とD700(iso200)とで同じシーンを撮影。D3X、D700ともに細かく露出を変えて数枚撮影し、その中からハイライト部分の明るさが近く、ヒストグラムの形が最も近い2枚を選び出し、SILKYPIXを使用して同一設定でRAW現像をした上で比較した。

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NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX
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NikonD700 Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

 抜けた写真という言葉を初めて聞いたのは、昔、
「プロの写真家になりたい」
 と昆虫写真家の海野和男先生の事務所を初めて訪ねた時のことだ。
「写真持ってきた?」
「はい、持ってきました。」
「じゃあ、写真見ましょう。」
 と僕の写真を見てもらったのだが、海野先生はたまたまその時海野事務所にお越しになっていた編集者のEさんに
「Eさんどう思う?」
 と声をかけた。
 Eさんはしばらくぼくの写真を見て、
「抜けた写真が欲しいね。」
 と一言。
「抜けた写真ってどんな意味ですか?」
 と僕が質問をしたら、海野先生が、
「逆光とかそんな写真じゃなくて、順光に近い光が当たっていて、被写体の色がくっきりと出ている写真だね。」
 と教えてくださった。
 写真愛好家は、逆光のような特殊な光の状況のもとで味わいのある写真を撮ることを好むが、売れるのは抜けた写真であり、Eさんはまさに編集者の立場から、こんな写真を使いたいと教えてくださったのだった。

 さて、抜けた写真を撮りたい場合、D3XとD700とを比較すると、D3Xの画像の方が一目見ただけでコントラストが高くて抜けがいい。D3Xがポジとするなら、D700はネガっぽい。
 この差を体験してしまうと、面倒でも、大きくて重たいD3Xを持ち出したくなる。
 だが写真の面白いところは、それが絶対的に優れているわけではないところ。コントラストが高くて抜けがいいということは、時には硬いということでもある。そして、ネガ的なラティチュードが広い柔らかい描写が欲しい時にはD700が適する場合もある。
 D3Xの画像を拡大すると硬くてもちゃんと写っているのだが、画質の評価にはそれとは別に、普通に一般の人が見た時にその人がどう感じるか?という側面からの評価もある。「硬くてもちゃんと写っているのですよ。」と一般の人に幾ら説明しても、それには何の意味もないだろう。
 
 例えばフィルムとデジタルとを比較した際に、写真家には、
「フィルムの方が伸びるし伸ばした時の破たんが小さい。」
 という人が多いが、一般書の編集者には、
「デジタルの方が伸びる。」
 という人が圧倒的に多い。
 それは、写真家と編集者とでは見ているポイントが違うということであり、おそらく写真家は細かいところを見ているのだが、編集者はパッと見の第一印象を見ておられるのだと思う。
 

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ニコンの画像処理
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NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)NX2
スタジオ撮影 ストロボ5灯

 このブログの中ではニコンの画像処理に対して厳しく、キヤノンやSILKYPIXの画像処理を高く評価している僕だが、それは野外で自然写真を撮るような場合、つまり光の良し悪しよりも目の前の被写体をとにかく撮影しなければならない場合の話と断っておなければならないだろう。
 特に、ニコンの画像処理は暗部の描写に癖があり、ローキーながらも暗部をしっとりと描きだした場合に、暗部が硬くて、同時にノイズレスではあるが、質感が悪い。
 一方で、光をコントロールできるスタジオ撮影の場合は、NX2の画像処理は頼りになると断言しておこう。特にスタジオでD3Xを使用し、NX2でRAW現像した場合の描写はすばらしい。
 今日の画像は、羽化直後のテントウムシをスタジオで撮影したものだが、NX2を使用してRAW現像を行った。
 同じスタジオ撮影でも水槽の中の魚を撮影するような場合は、ガラスや水の存在で照明器具の設置に幾分制限があり、自在なライティングが難しい。そしてその場合は、スタジオでもSILKYPIXの方がいい結果が得られることも少なくない。
 だが、陸上の被写体の場合は、スペースさえあればライトをどんどん増やすことができるし、写真が写りやすい状況を追求できる。今日の画像の撮影には、5灯のライトを使用した。

 つまり、他人のカメラの評価を参考にする場合、その人がどんな使い方をしているのかが肝心。
 自然写真とスタジオ写真とでは、適した道具はしばしば異なる。
 また同じ自然写真でも、ローキーな作風の人に適する道具とハイキーな作風の人に適する道具とでは異なるだろうし、特定の光の条件下でしか撮影しない人と、どんな光の状況下でもまず写真を撮ることを優先する人とでも、適した道具は異なる。
 一般的に言えば、融通が利き、穴が小さいのはキヤノン。ニコンには融通がきかない原理主義者っぽい側面があり、それがニコンの扱いにくさでもあり、魅力でもある。
 まあ、結局、使ってみるしかないのだが・・・。
 

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D3X vs. D700 ローキーな写真編
 NikonD3X(iso100)とD700(iso200)とで同じシーンを撮影。D3X、D700ともに細かく露出を変えて数枚撮影し、その中からハイライト部分の明るさが近く、ヒストグラムの形が最も近い2枚を選び出し、SILKYPIXを使用して同一設定でRAW現像をした上で比較した。

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NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX
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NikonD700 AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

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NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX
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NikonD700 AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

 さらに、同様のテストを別のシーンでも試みた。

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NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX
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NikonD700 Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

 両者を比較すると、D3Xで撮影した画像の方がコントラストが高く抜けがいい。一方でその分、D3Xは硬い印象を与えることもあり、D700で撮影した画像の方が柔らかくて明るい(緩いと書いた方が正確かも)印象になる。
 写真の画質には人の好みがあるので、絶対的な良し悪しなどはないのだが、一般的に言えば、抜けがいいD3Xの方が画質がよく、写真家には、おそらくD700よりもD3Xの画質が好まれることが多いだろう。

 ただ、D3Xはボディーが大きく下に出っ張るため、僕のような小さな生き物を撮影する者にとっては、目線を下げようとすると、その出っ張りが地面にぶつかってしまったり、水の中に突っ込んでしまうこともあることは前回も書いた。だから、D3に対するD700のようなより小さなカメラが、D3Xに対しても発売されることを待ち望んでいるのだが、なかなか発売されない。
 噂によるとそれよりも先に、D3に対するD3sのようなカメラがD700に対して発売されるとのこと。もうカメラの生産に入っている、というような話を聞いたことがある。
 ということは、世間は動画やより優れた高感度特製を求めていて、D3Xのような画質のカメラを、という要望は少ないということだろうか。

 一方で、シーンによっては画質が緩いカメラが欲しいこともあり、そんな場合にはD3Xが手元にあっても、あえてD700を持ち出す場合もあり、そこが、写真の面白いところだ。僕の場合は、影になっている部分を緩やかに出したい場合にD700を使う。
 仕事としてのネイチャーフォトの場合は、写真に明るさを求められるケースが圧倒的に多く、写真を売りたい場合、暗部のしまりがむしろ悪くて緩い、写真家からすれば、
「おい、それは違うだろう!」
 とつい言いたくなるような、表面的に明るく感じられる画像の方が売れやすい。
 そう言う意味では、D700の画質の方が、市場の一般受けはいいのかもしれない。
 だが、売れるとか売れないといったことが関係なく作品作りをしたいのなら、僕は、D3Xを使いたくなる。
 

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NioknD700が得意とするシーン
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NikonD700 Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

 昨年までは、その画質が好きになれなかったニコンD700。具体的には、ニコン純正ソフトであるNX2でRAWデータを現像すると、絵が力強い半面、諧調が悪くて、自然物の丸みや水の質感などをうまく表現できない場合が多く、高感度がどうしても必要な時だけに使う、代打的なカメラだった。
 ところがそれをシルキーピクスで現像すれば、一転してNX2とは真逆の繊細な絵が得られることがわかり、今シーズンからは、D700は、僕が頻繁に使用するカメラになった。

 D3Xとの使い分けだが、一番のポイントは、ボディーの形状だ。
 僕は、小さな生き物の撮影の際に、なるべく生き物の目の高さまで目線を下げたい気持ちが強いのだが、ボディーが下側に出っ張っているD3Xでは、その出っ張りが邪魔をして目線が下げられないケースがある。たとえば、水面に浮かぶ睡蓮の葉っぱにトンボが止まっている。そしてそのトンボの目の高さにまでD3Xを下げようとすると、ボディー下側のでっぱりの部分が水面に突っ込んでしまうため、それ以上目線を下げることができない。
 そんな場合にD700を持ち出す。
 ただし、これは一部のネイチャーフォトグラファイーにしか分かりにくい話であろう。
 そこで、一般的な撮影をしている人にも関係がある点を取り上げるなら、明暗差が大きな被写体を撮影する場合は、D3Xよりも、ダイナミックレンジが広いD700が使いやすい。逆光の風景写真などは、ほんのわずかな空の質感描写の違いで写真の善し悪しが大きく左右されてしまい、D3Xであれば、そらが白飛びをして質感を失ってしまうことが、D700ならばギリギリ写ってくれる場合がある。
先日、トンボの撮影の際に撮影した朝の池の付近の景色なども、D3Xでは、暗部がつぶれるか、空がより多く白飛びをして質感を失うかのどちらかだっただろう。

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